伝統的建築物である能楽堂にも水分管理が重要です。岡山市内にある山陽放送(RSK)の本社が最近新築され、その中に能楽堂が建設されました。その中にある能舞台は総ヒノキ造りですが、高級な部材が用いられ、能楽堂にはヒノキの香りが満ちています。
さて、ここで問題になるのが、使われているヒノキ材の水分管理です。木材は、それが置かれている場所の温度と湿度に平衡する含水率(平衡含水率)に近づこうとします。木材は、木材中の水分量(含水率)が変化すれば、それに伴って寸法が変化します。つまり、能楽堂内の温度、湿度が変化すれば、能舞台に用いられている木材は、その時の平衡含水率に近づこうとして寸法が変化することになります。冬期は湿度が下がり、木材の含水率が下がるため寸法が小さくなります(収縮する)。この時、部材と部材の間に隙間が生じます。場合によっては、収縮に伴う割れが生じることもあります。一方、梅雨期には能楽堂内の平衡含水率が高くなるために木材の寸法は大きくなります(膨潤する)。この時には、部材間の隙間はなくなる、もしくは少なくなっています。能舞台では、このように部材の寸法が年変動を起こすために、なるべくそれを少なくして、安定した外観を保つことが望ましいということになります。
当事務所では、能楽堂の建設以来、継続して状況を観察し、水分管理に対するアドバイスをさせて頂いています。